Suwachelin #3 | Page 10
諏訪地域の『食』の特異的な面を考察した時、その地勢的
な影響を感じる。特に、超高原都市 *1 であること、海洋
域からの距離 *2、関東・関西圏との距離 *3、明治以降の工
業による近代化 *4 を要因とした、特徴的な幾つかの食文
化を作り出したと、筆者は想像している。
1
*1 諏訪地域の最底域である諏訪
湖の標高は 759m であり、人口密集
地域は湖周辺から八ヶ岳山麓へ広が
る。諏訪地域で人口の最も多い茅野
不思議 一:鰻の調理法
市の市役所は日本の市役所の中で最
鰻は関東では『背開き、蒸してか
回しても約 21 万人の人口が標高約
も標高が高い(801 m)
。日本中を見
700 〜 800 mに集中して居住してい
ら焼く』
、関西では『腹開き、直
る地域は他に無い。岐阜県高山市で
火焼き』が基本であるが、諏訪地
域の場合、
『背開き、直火焼き』
も市街地は標高 570 m、県内の松本
市も 592m と諏訪地域より低い
直火焼きでこんがり
と関東・関西の特徴が混在して
*2 日本で海無し県と呼ばれる所
いる店が多い。東西の交流の中
は、長野県以外に岐阜県、群馬県、
央地点であることの影響か、諏
栃木県、埼玉県、山梨県、滋賀県、
奈良県とあるが、その深度において
訪は鰻文化の分水嶺と呼べるか
は、特に諏訪地域の場合、長野県及
もしれない。
び 本 州 の 中 央 に 位 置 し、 且 つ 太 平
洋、日本海の両方から 200km 近く
離れていることから、海無し度の非
常に高い地域と言える
めくってみるとやっぱり背開きである
*3 諏訪地域は、関東〜関西を結
ぶ中山道の要地として、また甲州街
2
道の終点としても位置し、関東、関
不思議 二:ケーキと漬物
は
づ
長野県の寒い冬、こたつにあたりながら 3 時のお茶の定番は『お葉漬
け』である。
(所謂、一般的には野沢菜漬と称されていますが、実際に
は、長野県内各盆地で栽培される漬け物用の葉物は種類が違うようで
ある。
)しかしながら、諏訪の場合、お葉漬けに加え、コーヒー・紅
茶、漬物、ショートケーキ、みかん、さらには煮豆、寒天、和菓子、
まんじゅう等が混在してこたつの上に並べられる。
西の両側との交流があった
*4 諏訪地域は、特に