Suwachelin #3 | Page 11
不思議 四:塩を食う
諏訪の食卓で用いる特徴的な食材は『塩』絡みが多
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い。有名な塩イカ、塩サンマ、菓子では塩羊羹、ス
ーパーの魚コーナーは鮮魚より、味噌漬け、粕漬け
ぬか
の魚が広く置かれ、野菜は糠漬けではなく、味噌漬
け、粕もみを好む。塩は生きていく上で必須であり
ながら、当然、この海洋から極度に遠方な土地では
昔から塩を得るために、様々な交流を遠隔地と行っ
てきたことは容易に考えられる。
1900 年に鉄道が開
不思議 五:鮮魚コンプレックス
通する以前、人馬でしか物流のできない時代なら尚
刺身好きである。最近でこそ冷蔵輸送技術
更、塩は交易の要であったはずであり、塩を欲する
が発達し、沿岸地とも遜色の無い刺身が食
DNA は今でも脈々と諏訪人には流れているのかも
べることのできる時代になったが、一昔前
しれない。
は刺身など大変なご馳走であった。故に、
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諏訪地域の宿泊施設では、遠方のお客の夕
飯に、刺し盛を振舞うことは(味は別にし
て)ごく普通のもてなしであった。
現代でも、その典型的な事例がある。諏訪
市に新潟県から出店した鮮魚を売りにする
塩サンマ
『角上魚類』
があるが、この店舗では大晦日
塩イカ
に僅か1日で寿司オードブルを1000万
円以上売り上げる。この金額は同店の東京
不思議 六:正月の魚
を含む各支店も敵わない勢いのようだ。
日本は御歳取りと称して大晦
日、正月に魚を食べる。関東で
は新巻き鮭に代表されるように
ぶり
鮭、関西では鰤を食する。諏訪
地域は、各家庭のルーツにより
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バラバラ。東西交流の中点、ま
た工業集積により、多くの人が
日本各地から仕事を求めてこの
地へ移り住んだことなど、多々
条件が重なったせいか、暮れの
魚屋さんには、鮭、鰤が共に並
ぶ。
不思議 七:諏訪オンリー ローカルチェーン
テンホウフーズ
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テンホウについては、本誌 issue1 でも触れているが、他地域へ
ほとんど進出をしていない、諏訪地域ほぼ限定、ローカルチェ
ーン店である。テンホウは基本はラーメン、餃子が中心、安く
て旨いが信条である。
諏訪人は、安い、早い、腹いっぱいが大好き。長野県といえば
蕎麦のイメージがあるが、実はラーメン好きかも。直営25
店、FC 4店、創業昭和48年のこのレジェンドは、諏訪人の嗜
好に最もマッチした食かもしれない。
原 雅廣
はら・まさひろ/ NPO 法人匠の町しもすわあき
ないプロジェクト専務理事。
49歳。日々は地元企
業に勤務。日本酒サービス研究会認定きき酒師。
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