The Doppler Quarterly (日本語) 夏 2018 | Page 48
このコンセプトで強調しているのは、サイロの外側の作業を認識し、理解すること、プロジェ
クトの範囲を広げること、最終結果に完全な説明責任があること、迅速に価値を実現する上
でのあらゆる人工的な障害を除去するよう作業すること、などを個人に要求することです。こ
れらの事項それ自体は、あらゆる組織に大きな付加価値を生み出します。1 人のフルスタッ
ク開発者がそれほどの価値を生み出せるとしたら、
10、
20、
100 人と雇ったらどうでしょう ? さ
らに、それらの開発者がフルスタックチームを組んだらどうでしょう ? しかし、フルスタック
チームとは、フルスタック開発者で構成されるチームなのでしょうか ? いいえ、そうではあり
ません。フルスタックチームは、フルスタック開発者のチームではありません。
日常のあらゆるものがソフトウェア中心に考えられていますが、それ以外にも多くの領域が
あり、製品をリリースするための対応を必要としています。これらに含まれるのは、ビジネス分
析、テスト、製品管理、利害関係者対応、コミュニケーションなどです。フルスタックチームが
フルスタック開発者アプローチから取り入れたものは、摩擦なしで、自己完結した、価値を生
み出すユニットとして機能するという考え方です。真のフルスタックチームの特徴を 5 つ示し
ます。
1
2
1. 自己完結 4. 説明責任
2. 権限の付与 5. 価値の創出
3. アジャイル
自己完結
フルスタック開発者と同様に、フルスタックチームは、プロジェクトや業務のすべての側面に
対応する必要があります。これは、ビジネス分析からアーキテクチャー設計、ネットワーキン
グ、データベース、ソフトウェア、テスト、ドキュメント、知識トランスファーなど、すべてのレ
ベルにおけるソリューションの実際の導入までを含んだすべてをカバーします。フルスタック
チームには、 1 人または複数のフルスタック開発者がいる場合があります。キーポイントは、
チームが自律的である必要があり、必要な結果を実現するための適切なスキルと適切なツー
ルが必要であるということです。
権限の付与
フルスタックチームには、適切な意思決定を実行する権限を与える必要があります。しかも、
その権限はトップから付与されなければなりません。これがきわめて重要です。チームが行
う意志決定は、機能の実装から、アーキテクチャー設計、製品のリリース方法にいたるまで多
岐にわたります。チームには、取り組む内容、時期、方法について優先度を設定する権限が必
要です。常に他の部署に承認をもらいに行かなければならない場合、そのチームは権限を付
与されているとは言えず、プロセスは不要な障害でいっぱいになります。そのうえ、チームが
独自に意思決定できない場合、他者の行った決定に対して説明責任を負えません。
46 | THE DOPPLER | 2018 年夏号