The Doppler Quarterly (日本語) 冬 2017 | Page 28
今後の展望
デジタルディスラプションに関しては、スピードが最も重要です。多くの業界ではネットワーク
効果によって勝者が最大の利益を得る状況が生み出され、たとえばホスピタリティ市場の場
合、 Airbnb 社ほど大きな影響を持つ企業が他に現れる可能性は高くありません。先駆者の
メリットは大きく、ディスラプションをリードする企業が何らかの形で市場での地位を明け渡
さなければ、そうした企業によって他の企業が締め出されることになります。
より戦術的なレベルでは、企業は先駆者になる必要はなく、状況を変えるには、デジタルテク
ノロジーを活用して、たとえば工場の生産現場を自動化したり、 RFID で物流を追跡したりす
ることにより、効率を向上させるだけで十分な場合があります。デジタル的なアプローチでビ
ジネスの質を高め、最小限の投資で何度も価値を創出している、このような種類の組織の例
は数多くあります。
今後は、経済面が大きく変わっていくものと思われます。たとえば失職を例にすると、現在米
国には、 350 万人を超えるプロフェッショナルのトラックドライバーがおり、国内で最も人気の
ある職業の 1 つとなっていますが、自動運転テクノロジーの効率と影響を考えれば、今後 5
∼ 10 年でどのドライバーも職を失う可能性があることが予測できます。これは、ドライバーと
して生計を立てている全世界の数百万人の人に悪影響を与えるように思われますが、売上原
価が下がれば、高速道路での死亡者の数も同様に減るはずです。新しいテクノロジーは多く
の既存の職業に取って代わる一方、人間のオペレーターが必要とされる派生的なサービスに
関する新たな機会も生み出します。
コンシューマーの期待
デジタルディスラプションは、コンシューマーにどのような成果をもたらす可能性が最も高い
のでしょうか。私たちは自動化に期待を寄せており、現時点では、注文した商品のステータス
について毎日最新の情報を受け取れることに完全に満足していますが、将来はそれが分単位
になることを期待するようになると考えられます。さらに、自動的な問題の処理を求めるよう
にもなると思われ、たとえば、自動車が直接ディーラーに問題を報告し、さらには人間が関わ
らなくても修理のスケジュールを設定するといったことを期待するようになるでしょう。
こうしたことからデジタルイノベーションの次の波が生まれ、ディスラプターが最初の波に乗
ることになります。クラウド、 IoT、機械学習などの破壊的なテクノロジーは、デジタルイノベー
ションを有効活用しており、たとえば医師は近いうちに、私たちの健康を監視する機能によっ
て診断が下るはるか前にプロアクティブに病気を防ぐことができるようになると思われます。
企業の変革
テクノロジーは、今日の私たちの生活に変化をもたらす最大の要因となっており、企業も人
間も今後、確実にその効果を感じることになります。ただし、新たなテクノロジーを中心にイノ
ベーションを推進する動きがなければ、そのどれによっても真の効果がもたらされることは
ありません。
多くの企業は、既存のシステムで新たなテクノロジーを使用しても同じ成果は期待できないと
いうことを認識しつつあります。デジタル世界への移行は途方もない作業であり、そのために
26 | THE DOPPLER | 2017 年冬号