Garuda Indonesia Colours Magazine October 2014 | Page 222
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Tana Toraja | タナ・トラジャ
山の頂上に着くと、太陽が地平線から顔を出し、
初めてトラジャランドという息を呑むほどの美し
さをこの目で見ることができた。
山の斜面に広が
る棚田が太陽の光を反射して輝き、
まるで巨大
な鏡が割れて辺り一帯に散らばっているかのよ
うだった。
情熱的な恋人のように渓谷を包み込む低い雲
が、彫刻や装飾が施されたトラジャの建築物の
形をはっきりと浮かび上がらせている。
夕暮れの中ミニバンを降りてすぐに気付いたの
は、
ほんのりとショウガの香りがする空気があま
りに新鮮なことだ。清々しくひんやりしていて、下
の平野の気候とは正反対だ。
トンコナンと呼ばれるトラジャ族の伝統的家屋
は、
ゾウの足のような7本の木杭の上に立ち、
両
側に高く湾曲した屋根を支えている。壁と軒には
黒と赤でシンボルが描かれ、
エキゾチックなデザ
インが強調されている。細い基盤と大きく広がっ
た切妻屋根が特徴の住居は、
トラジャランド文
化の強力なシンボルだ。
弧を描くような屋根のデ
ザインは、宇宙船に乗って下りてきた先祖の名
残だろうか。
トラジャ族の文化において最も重要と言えるの
が葬送儀式である。可能であれば、盛大で豪奢
なこの儀式に参加することでこの地への旅は完
璧なものになるだろう。
ここでは死者に別れを告
私達は勧められたとおり、
早起きをして更に山を
げるために途方もなく高額な費用がかかる。奉
登ってトラジャランドを見下ろし、
「星に近付い
納する水牛の数によって、
死者と遺族の身分の
て」
みることにした。夜明け前の薄暗い光の中で、 高さが公に示されることになるからだ。
私達は細く曲がりくねったでこぼこ道を進み、大
きな優しい目をした水牛が草を食む姿を見なが
ピンク色の斑点がついた水牛は1頭が数千ドル
らさらに上へと進んだ。
そのうち両側の崖が、
ど
することもある。
身分の高い一族は100頭もの
んどん急になっていった。
水牛を生贄として供え、
そのために財産を失って
視覚:渓谷の眺め
トラジャの本当の良さを体感するには、
「星に近
付く」
ことが必要だ。最も標高が高い地点まで車
で行くと、壮大な渓谷が下に広がる絶景が待っ
ている。谷床まで続く棚田と、
それを囲むトンコ
ナンのそびえ立つ屋根が美しい。
聴覚:静けさ
静寂。交通量が多く賑やかなランテパオから離
れると、静けさが訪れ、鳥の歌声で空気が満たさ
れているのがわかる。
田んぼからは水牛のやさし
い鳴き声が聞こえ、絶え間なく背景に流れてい
る川のせせらぎの音も耳に心地良い。