Garuda Indonesia Colours Magazine October 2014 | Page 222

220 Tana Toraja | タナ・トラジャ 山の頂上に着くと、太陽が地平線から顔を出し、 初めてトラジャランドという息を呑むほどの美し さをこの目で見ることができた。 山の斜面に広が る棚田が太陽の光を反射して輝き、 まるで巨大 な鏡が割れて辺り一帯に散らばっているかのよ うだった。 情熱的な恋人のように渓谷を包み込む低い雲 が、彫刻や装飾が施されたトラジャの建築物の 形をはっきりと浮かび上がらせている。 夕暮れの中ミニバンを降りてすぐに気付いたの は、 ほんのりとショウガの香りがする空気があま りに新鮮なことだ。清々しくひんやりしていて、下 の平野の気候とは正反対だ。 トンコナンと呼ばれるトラジャ族の伝統的家屋 は、 ゾウの足のような7本の木杭の上に立ち、 両 側に高く湾曲した屋根を支えている。壁と軒には 黒と赤でシンボルが描かれ、 エキゾチックなデザ インが強調されている。細い基盤と大きく広がっ た切妻屋根が特徴の住居は、 トラジャランド文 化の強力なシンボルだ。 弧を描くような屋根のデ ザインは、宇宙船に乗って下りてきた先祖の名 残だろうか。 トラジャ族の文化において最も重要と言えるの が葬送儀式である。可能であれば、盛大で豪奢 なこの儀式に参加することでこの地への旅は完 璧なものになるだろう。 ここでは死者に別れを告 私達は勧められたとおり、 早起きをして更に山を げるために途方もなく高額な費用がかかる。奉 登ってトラジャランドを見下ろし、 「星に近付い 納する水牛の数によって、 死者と遺族の身分の て」 みることにした。夜明け前の薄暗い光の中で、 高さが公に示されることになるからだ。 私達は細く曲がりくねったでこぼこ道を進み、大 きな優しい目をした水牛が草を食む姿を見なが ピンク色の斑点がついた水牛は1頭が数千ドル らさらに上へと進んだ。 そのうち両側の崖が、 ど することもある。 身分の高い一族は100頭もの んどん急になっていった。 水牛を生贄として供え、 そのために財産を失って 視覚:渓谷の眺め トラジャの本当の良さを体感するには、 「星に近 付く」 ことが必要だ。最も標高が高い地点まで車 で行くと、壮大な渓谷が下に広がる絶景が待っ ている。谷床まで続く棚田と、 それを囲むトンコ ナンのそびえ立つ屋根が美しい。 聴覚:静けさ 静寂。交通量が多く賑やかなランテパオから離 れると、静けさが訪れ、鳥の歌声で空気が満たさ れているのがわかる。 田んぼからは水牛のやさし い鳴き声が聞こえ、絶え間なく背景に流れてい る川のせせらぎの音も耳に心地良い。