Garuda Indonesia Colours Magazine March 2014 | Page 222
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Solo | ソロ
ソロ
文:エリック・ランドルフ、撮影:トム・パーカー
ジャワ島の中心に位置し、
インドネシア文化の中心地であるソ
ロは、近代的な都市でありながらこの国の過去へといざなう
窓でもある。
買い物好きな人も歴史を愛する人も同じように楽
しめるこの街をエリック・ランドルフが取材する。
自分に芸術的な才能がないことは重々承知している。私は今、
インドネ
かつてスラカルタと呼ばれていたソロには、古い伝統が染み込んでい
ン・セティアワンの工房で、小さなスツールに座っている。
キャンバスと
植者に占拠された後の1745年に作られた街だ。
ソロにいたマタラム
シア特産のバティック
(ろうけつ染めの生地)
を制作販売するグナワ
奇妙な形のペンを手にして、私は2歳のいとこが赤面してしまうような
ものを作り上げていた。
インドネシアのバティックは、数年前にユネスコの世界無形文化遺産
に登録された。
その決断に私の作品が貢献したとはとても思えない
る。
だが実は比較的歴史が浅く、
マタラム王国の首都がオランダ人入
王国の王族はオランダ人と協定を結び、
この新たな地に豊かな王朝を
築き上げた。1945年にインドネシアの独立が宣言された際には政
治的権力を剥奪されたが、王国は地元の伝統を守る存在であり続け
ている。
が、
ともあれグナワン・セティアワンのバティック制作体験クラスに参
私はクラトンとして知られる、
ソロにある二つの王宮の一つへと向かっ
が、
いかに優れているのかを実感させてくれた―彼らは長い年月をか
並木のある涼しそうな中庭や大きな建物の中で、
日中の暑さから逃れ
加するのは素晴らしい体験だった。
自分のすぐそばにいる職人達の技
けて、
その技術を習得しているのだ。
た。王宮内の争いや男女の噂話の歴史を知りたいという思いに加え、
たいと思ったからだ。
バティックは古くから受け継がれてきた、
ろうけつ染めの技術だ。
ジャ
国王の権力は、地元の人々が信仰するアニミズムの伝統と強く結び付
ドやスリランカの貿易人から伝えられたと考えられている。多くの国々
にある塔は王と女神が対話をする場所とされている。
そこに敷かれた
ワ島に文書記録ができる前から存在し、6世紀または7世紀にイン
で作られていたこともあるが、
その心の故郷はジャワ島だ。
職人達はチャンチンと呼ばれる道具―溶かした蜜蝋が入った、木製の
万年筆のようなもの―を使って、複雑なデザインを器用に描いてい
く。蝋が染料をはじくため、布を染めるとその部分が白く残って模様が
浮かび上がるという仕組みだ。
とても複雑で、驚くほど美しく変化に富
んだ作品が出来上がる。
ソロのバティックは、長く受け継がれてきた数々の伝統に支えられてい
る。街の有力な商家が運営するダナル・ハディ・バティック博物館で
は、
オランダ人入植者の奥方が発明したデザインから、
かつての国王
や女王の気品あるスタイル、結婚式や子供の誕生といったお祝い事に
用いられた特別なものまで、
バティックの全容を知ることができる。
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